しいたけは菌床と原木栽培で違いがある?家庭でも収穫を楽しむ方法とは

しいたけは、日本の食卓で古くから親しまれているきのこの一種です。その栽培方法には「原木栽培」と「菌床栽培」の2種類があります。これらの栽培方法は多くの生産農家で取り入れられており、それぞれ違いはありますが、家庭でも挑戦することが可能です。

そこで今回は、しいたけの栽培方法の違いや、家庭で楽しむためのポイントなどを詳しく解説します。栽培から収穫まで、新鮮なしいたけを楽しむポイントをご案内します。しいたけ農家として50年以上の歴史があるタマチャンショップの知見も交えた内容なので、ぜひ最後までご覧ください。


しいたけとは?

しいたけは、ハラタケ目キシメジ科に属するキノコで、日本や中国を原産とする食用菌の一種です。古くから食用や保存食として利用され、日本人にとって定番の食材です。

しいたけの特徴は、ぷっくりとした傘としっかりとした柄(え)にあります。傘の表面は茶色やこげ茶色で、裏側にはヒダが並び、成熟すると胞子を放出します。しいたけの栄養価は高く香り豊かで、加熱するとさらに旨味が増すため、和食だけでなく洋食や中華料理などにも活用されています。

また、しいたけはクヌギやコナラなどの広葉樹の倒木や枯れ木に自生し、春や秋に発生します。現在では人工栽培が進み、季節を問わず安定して供給されるようになりました。


しいたけ栽培方法の種類

しいたけの栽培方法には、大きく分けて「原木栽培」と「菌床栽培」の2種類があります。それぞれ育てる環境・収穫までの期間・風味に違いがあり、目的に応じて選ぶことが重要です。

原木栽培

原木栽培は、クヌギやコナラなどの広葉樹の原木を使用し、自然の中で育てる伝統的な方法です。しいたけ菌を植え付けた原木を森や山林などの適切な環境に置き、自然の力を利用して成長させます。

この方法で育てたしいたけは、風味や香りが豊かで、肉厚なしっかりとした食感が楽しめます。育成には時間がかかるものの、自然に近い栽培方法のため、質の高いしいたけが収穫できます。ただし、気温や湿度などの環境条件に左右されやすく、管理には一定の知識と手間が必要とされます。

菌床栽培

菌床栽培は、おがくずや米ぬかを固めた「菌床」にしいたけ菌を植え付け、温度や湿度を管理しながら育てる方法です。室内やビニールハウスなどで管理するため、気候に左右されず短期間で収穫できます。

菌床栽培のしいたけは、クセが少なく、均一な品質のものが多いです。また、管理が比較的簡単なため、家庭での栽培にも向いています。収穫までの期間が短く、1つの菌床から複数回の収穫ができ、効率よくしいたけを楽しめます。


しいたけを栽培するメリット

しいたけを自分で栽培するのはある程度手間がかかりますが、栽培することで嬉しいメリットもいくつかあります。以下では、しいたけの栽培を自分でやった際のメリットを紹介します。

新鮮なしいたけを味わえる

家庭でしいたけを栽培する最大の魅力は、収穫したての新鮮なしいたけを食べられることです。市販のしいたけは、流通の過程で時間が経過し、少なからず鮮度が落ちます。しかし、自宅で育てれば最も食べ頃の状態で収穫できるため、しいたけ本来の香りや旨味を存分に楽しめます。

特に、収穫直後のしいたけは水分をたっぷり含み、肉厚で歯ごたえが良いです。シンプルに焼くだけでも十分に美味しく、市販のものとはひと味違う食感や風味を楽しめます。

栽培の過程を楽しめる

しいたけを栽培することで、発芽から収穫までの成長過程を観察できます。特に菌床栽培は、数日ごとに変化があり、成長のスピードを実感しやすいです。

また、原木栽培ではじっくりと時間をかけて菌が広がる様子を観察でき、自然の仕組みを学ぶことができます。家庭で食育の一環としてもピッタリなため、子どもと一緒に育てれば食材への関心を高めるきっかけになるでしょう。

無農薬で安心して食べられる

家庭でしいたけを栽培すれば、無農薬で育てることができます。市販のしいたけは、品質を保つために防カビ処理を施していることもありますが、自分で栽培すればそうした心配がありません。

また、しいたけは比較的害虫の被害が少なく、農薬を使わなくても育てやすいです。自分で安心できる食材を育てられるのは、家庭栽培ならではのメリットです。


しいたけの栽培方法とは?

しいたけの栽培には、大きく分けて「原木栽培」と「菌床栽培」の2種類があります。どちらも家庭で挑戦できる方法ですが、必要な道具や育て方に違いがあるため、自分に合った方法を選ぶことが大切です。以下では、それぞれの栽培方法について、準備するものと栽培の流れを解説します。

原木しいたけの栽培方法

原木しいたけの栽培は、自然に近い環境で育てる昔ながらの方法です。育成には適した時期に合わせた作業と時間を必要としますが、風味豊かで肉厚なしいたけを収穫できます。

必要なもの

原木となる広葉樹(クヌギ・コナラ・シイノキ・カシ類):長さ1m程度で直径10~15cmほど
しいたけ菌の種駒:しいたけ菌が植え付けられた木片
電動ドリル:穴あけ用
金づち:種駒を打ち込むため
伏せ込み場所:原木を置く庭や林など湿度が保てる場所

栽培の流れ

1.原木の準備(10〜1月)
伐採後、葉をつけたまま1~2ヶ月ほど乾燥させた広葉樹の原木を使用します。乾燥させることで余分な水分が飛ぶと、しいたけ菌が根付きやすくなります。市販されているしいたけ用の原木は、乾燥等が十分に済んでいることもあるので、状態を見て購入しましょう。
2.穴を開けて種駒を植える(1〜3月)
原木にドリルを使って15〜20cm間隔で穴を開け、そこに金づちで種駒を打ち込みます。開ける穴は、種駒より5mmほど深いのが理想です。市販の場合は、既に種駒が打ってあるものを選ぶと、作業の手間を減らせます。
3.仮伏せによる菌の定着(1〜4月)
直射日光が当たらず、風通しの良い伏せ込み場所を用意します。そこに原木を並べて数ヶ月〜1年ほど置き、しいたけの菌を原木に定着させます。この期間を設けることで、しいたけの菌が原木の全体へと広がります。また、市販品は仮伏せ済みのものもありますので、置き場や収穫までの期間を考慮して購入するとよいでしょう。
4.本伏せによるしいたけ発生環境の準備(4月〜)
しいたけが発生しやすいように笠木や遮光ネットなどで日陰を作り、原木を立てかけたり並べたりして湿度を保てる環境を作ります。本伏せには、合掌・鳥居・井げたなどさまざまな方法があるため、本数や設置場所に合わせてやり方を工夫しましょう。
5.しいたけの発生と収穫
気温や湿度が成長に適した条件になると、しいたけが発生します。適切なサイズに育ったら収穫し、新鮮なうちに楽しみましょう。2回目以降も収穫を行う場合は、高温や低温にならず、温度を保てる場所で一旦休養させます。このとき乾燥し過ぎないよう注意すれば、次の発生をスムーズに促せるでしょう。

菌床しいたけの栽培方法

菌床しいたけの栽培は、おがくずや米ぬかを使った菌床を利用し、室内で育てる方法です。手軽に管理できるため、初心者でも挑戦しやすいです。

しいたけ農家でもある健康食品のタマチャンショップでは、家庭でも気軽に利用できるしいたけの菌床栽培キットも取り扱っていますので、今回はその栽培方法に沿って紹介します。

必要なもの

しいたけの菌床ブロック:状態のよいもの
霧吹き:湿度を調整するため
栽培用トレーまたはケース:室内で管理しやすいもの
・栽培場所
:直射日光が避けられて風通しの良い場所

菌床栽培の流れ

1.菌床の準備
菌床ブロックは袋に入っているので、開封して栽培を開始します。このとき、菌床が痛んでいないかあらかじめチェックします。しいたけの白い菌床以外に、カビや傷みが出ていないか確認しながら選ぶと安心です。
2.菌床の設置
しいたけの発生を促すために、菌床の全体に水をかけます。菌床は湿度が重要なので、ビニール袋やラップなどを使い、ゆとりを持って覆います。また、しいたけは直射日光が当たらないように、室内でも日陰の涼しい場所に置きましょう。
3.湿度・温度管理
毎日2〜3回ほど霧吹きで水を与え、空気の入れ替えを行います。湿度が適切に保たれ、温度も18〜24℃程度であれば、しいたけが発生しやすくなります。高温や低温だと成長に影響が出るため、様子を見ながら管理しましょう。
4.発生・収穫
条件が揃えば、約4~10日ほどでしいたけは成長を始めます。傘の直径が5~10cm程度になったら収穫し、美味しくいただきましょう。傘が開きすぎると味が落ちるため、タイミングよく収穫するのがコツです。
5.2回目以降の収穫準備
2回、3回としいたけを収穫したい場合、管理方法はそのままで2週間ほど様子を見ながら菌床を休養させます。休養期間が明けたら、水を張ったバケツに菌床を約1日沈め、再度管理を続けていくと椎茸が再び生えてきます。夏や冬は成長が鈍るので、湿度や温度管理に注意しましょう。


しいたけ栽培から収穫までのポイント

しいたけを育てる際は、適切な環境を整え、発生から収穫までのタイミングを見極めることが重要です。収穫にベストな時期を知らないと、成長が未熟なしいたけしか味わえない場合があります。そのため、成長の変化をしっかり観察しながら管理することが大切です。以下では、収穫の適切なタイミングや、失敗を防ぐためのポイントを解説します。

かさの開き具合を見て収穫する

しいたけの収穫タイミングは、かさの開き具合が重要です。収穫が早すぎると風味が十分に引き出されず、逆に成長しすぎると繊維が硬くなり、旨味が落ちてしまいます。そのため、最適なタイミングを見極めることが大切です。

目安となるのは、かさが完全に開ききる前の段階です。成熟したしいたけは、裏側のヒダがはっきりと見え、軸に付いている薄い膜がちょうど剥がれたころが理想的です。このタイミングで収穫すると、歯ごたえが良く、香りや旨味もしっかりと感じられます。

また、かさが大きく開くと、胞子を放出して栄養や風味が落ちます。この状態は次に発生する株に影響を与える場合があるため、様子を見ながら早めに収穫しましょう。

収穫後は適切な保存をする

しいたけを適切なタイミングで収穫した後は、保存方法にも注意が必要です。収穫したばかりのしいたけは水分が多いため、すぐに調理しない場合は、湿気を避けて保存することが重要です。

冷蔵保存する場合は、しいたけを新聞紙やキッチンペーパーに包み、通気性の良い袋に入れて野菜室に保存すると、鮮度を長く保つことができます。また、長期間保存する場合は冷凍すると使いやすいです。天日干しで乾燥しいたけにすれば、保存性を高めて旨味を凝縮できます。

菌床・原木は収穫後の休養や管理を行う

しいたけを収穫した後は、次の発生に向けた管理が大切です。特に菌床栽培の場合、収穫後に適切な休養期間を設けることで、再びしいたけが発生しやすくなります。

菌床の場合、収穫後に数日間しっかりと乾燥させることで次の発生を促せます。また、原木栽培の場合は収穫後も適度な湿度を保ち、次のしいたけが発生する環境を整えることが重要です。

しいたけは、適切な管理を続けることで、長期間にわたり収穫を楽しめる食材です。収穫のタイミングを見極めながら、次の発生に向けた準備もしっかり行いましょう。


しいたけ栽培に関する注意点

しいたけを美味しく育てるには、適切な管理が欠かせません。特に初心者の場合、栽培環境や管理方法が合わず、しいたけが発生しない・成長が遅い・カビの発生など、トラブルが起こるケースもあります。以下では、しいたけ栽培で気をつけるべきポイントについて解説します。

過度な乾燥や湿気に注意する

しいたけは、湿度が成長に影響するきのこです。特に菌床栽培の場合、乾燥しやすい環境では成長が遅れ、表面がしなびることがあります。一方で、湿度を過剰に与えるとカビや雑菌の繁殖が進み、しいたけが腐る可能性もあります。

適切な湿度管理をするには、菌床の表面が乾燥しすぎないように毎日霧吹きで水を与えつつ、過度な水分は避けましょう。湿気がこもりやすい場合は、風通しをする工夫も必要です。

高温や低温で管理しない

しいたけの成長には適した温度があり、それを外れると発生しづらくなります。原木栽培では自然の気温に左右されますが、菌床栽培の場合は、室温をしっかり管理することが大切です。

しいたけの発生に適した温度は18〜24℃程度とされており、高温になると菌床が劣化し、逆に低いと成長が遅れます。特に夏場の室温が30℃を超える環境では発生しづらくなるため、涼しい場所で管理するか、温度の調整ができるスペースを確保しましょう。

また、冬場の寒さでは成長がストップしてしまうため、寒冷地では屋内に移動させるなどの対応が必要です。

食べ頃のタイミングで収穫する

しいたけは、収穫のタイミングが遅れると味や食感が大きく変わるため、適切な時期の見極めが重要です。かさが開ききる前に収穫しないと、胞子を放出して次の発生に影響することもあります。

特に菌床栽培の場合、収穫を適切なタイミングで行わないと、次の発生がスムーズに進まない場合があるため注意しましょう。毎日しいたけの成長を観察しながら、最適なタイミングを見逃さないことが大切です。


よくある質問

しいたけ栽培については、初心者の方からさまざまな疑問が寄せられます。以下では、自宅での栽培方法や収穫のタイミング、原木栽培と菌床栽培の違い、病気や害虫のリスクについて詳しく解説します。

しいたけの栽培に適した時期は?

しいたけの栽培に適した時期は、栽培方法によって異なります。原木栽培の場合、3~5月の春や9~11月の秋が植え付けに最適です。この時期は気温と湿度のバランスが良く、菌が原木に定着しやすい環境が整います。植菌後は菌糸が全体に広がるまで休養期間が必要なため、実際にしいたけが多く発生するのは翌年の春や秋が中心です。特に秋は昼夜の寒暖差が大きくなるため、しいたけが育ちやすい条件が整います。

また、菌床栽培の場合は、温度と湿度を管理できるため、一年を通して栽培が可能です。しいたけの発生に適した温度を維持できれば、季節を問わず発生を促せます。ただし、夏場は30℃以上になると菌床が劣化しやすくなるため、涼しい場所で管理することがポイントです。逆に冬場は気温が10℃以下になると成長が遅くなるため、室温を調整しながら栽培すると良いでしょう。

原木と菌床で収穫できる回数に違いはある?

原木栽培と菌床栽培では、収穫できる回数や期間に違いがあります。原木栽培は、1本の原木から約2~3年は収穫が可能です。発生の頻度は春と秋を中心に年2回程度ですが、一度整った環境を用意すれば、毎年継続してしいたけを育てられます。

一方で菌床栽培は、1つの菌床ブロックから3~5回ほど収穫できます。しかし、1回目の収穫が最も多く、回数を重ねるごとに発生量が減るため、数回収穫したら新しい菌床ブロックに交換する必要があります。長期間楽しみたい場合は原木栽培、短期間で効率よく収穫したい場合は菌床栽培がおすすめです。

しいたけの病気や害虫による被害はある?

しいたけは比較的育てやすいキノコですが、管理が不十分だと病気や害虫の被害に遭うことがあります。

しいたけの栽培でよく見られる病気としては、雑菌やカビの発生が挙げられます。湿度が高すぎると、菌床や原木の表面に白や緑のカビが生えることがあり、しいたけの成長を妨げる原因になります。また、温度管理が不適切だと雑菌が繁殖し、しいたけの発生が止まってしまうこともあります。こうしたトラブルを防ぐには、温度と湿度の管理を心がけ、菌床や原木を定期的にチェックすることが重要です。

また、キノコバエやナメクジなどの害虫被害もあります。キノコバエはしいたけの周囲に卵を産みつけ、幼虫が菌床を食い荒らすことがあります。ナメクジは原木栽培で発生しやすく、しいたけを食害するため、防虫ネットや捕獲シートを活用すると効果的です。

病気や害虫を防ぐには、適切な栽培環境を維持し、発生しやすい要因を取り除くことが大切です。しっかりと管理すれば、健康なしいたけを長く楽しむことができます。

傷んだしいたけの見分け方は?

しいたけは新鮮なうちに食べるのが理想ですが、保存状態によっては傷むことがあります。傷んだしいたけを食べると風味が損なわれるだけでなく、体調を崩す場合もあるため、見分け方を知っておくことが大切です。

傷んだしいたけは、表面にぬめりが出ることもあります。新鮮なしいたけは乾燥して適度な弾力がありますが、傷んでくると表面に水っぽいぬめりが発生します。この状態が進行すると、カビや異臭を放つことがあります。

また、かさや軸が黒ずんでいる場合も注意が必要です。しいたけは時間が経つと酸化し、かさの裏側や軸が黒ずんできます。少しの変色であれば問題ありませんが、全体的に黒っぽさや触ると崩れそうであれば、食べるのは避けましょう。他にも、しいたけはほのかに土のような香りやキノコ特有の香ばしい香りがあります。しかし、傷むと酸っぱい匂いや腐敗臭が発生しまます。このような場合は、食べずに処分しましょう。


まとめ

しいたけの栽培には、原木栽培と菌床栽培の2種類があり、それぞれ異なる魅力があります。原木栽培は時間がかかるものの、自然の力で育つことで風味豊かになり、長期間収穫を楽しめます。一方、菌床栽培は管理が簡単しやすく短期間で効率よくしいたけを収穫できるため、初心者も手軽に挑戦できる方法です。

家庭でしいたけを栽培すると新鮮な状態で収穫でき、コストを抑えて繰り返し収穫できます。また、無農薬で安全に育てられることも大きなメリットです。発生から収穫までの成長を観察できる楽しさもあり、食育の一環としてもおすすめです。

栽培のポイントとしては、適切な湿度と温度の管理が欠かせません。特に収穫のタイミングは重要で、かさの縁が少し巻いている状態がベストです。傷んだしいたけの見分け方を知っておくことで、安全に美味しく食べられます。

しいたけ栽培にはいくつか注意点がありますが、基本的な管理をしっかり行えば、長く楽しむことができます。今回の内容を参考に自分に合った栽培方法を選び、新鮮なしいたけを自宅で育ててみてはいかがでしょうか。

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