近年、健康や美容に関心の高い方々の間で注目を集めている「ピスタチオ」。
その美しい緑色と独特の風味で多くの人を魅了していますが、実は、その小さな実には注目すべき栄養成分が豊富に含まれているのです。
「ナッツは太りそう」「カロリーが心配」と心配をされる方もいらっしゃいますが、実はピスタチオは、美肌ケアや健康維持、体重管理を意識する方に選ばれる理由となる栄養成分を含むことが科学的に確認されています。
本記事では、ピスタチオに含まれる主な栄養素とその特徴、食べ方のコツについて解説します。
美容や健康に関心のある方は、ぜひ参考にしてみてください。
ピスタチオとは?「ナッツの女王」と呼ばれる理由

中央アジアや西アジアが原産地のピスタチオは、ウルシ科の落葉樹の種子です。
現在は主にイラン・トルコ・アメリカなどで栽培されており、その豊富な栄養成分から「ナッツの女王」という美しい呼び名で親しまれています。
ピスタチオの特徴と由来
ピスタチオは、ウルシ科カイノキ属の植物の種子で、鮮やかな緑色とコクのある風味が特徴のナッツです。
その美しい緑色は、栄養素が豊富に含まれていることを示す証でもあり、硬い殻に包まれた仁(じん)の部分が食用とされています。
その歴史は古く、約4000年前の古代ペルシャ(現在のイラン周辺)ですでに栽培されていた記録があり、「最も古くから人に親しまれてきたナッツの一つ」ともいわれます。
19世紀にはヨーロッパからアメリカへと広がり、現在はアメリカ・イラン・トルコなどが主な生産地です。
ピスタチオは、その栄養価の高さから近年では美容と健康を意識する方々の間で注目が高まっています。
ピスタチオがもつ高い栄養価とそのバランス
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年によると、ピスタチオ(いり・味付け)100gあたりには、以下の主要栄養成分が含まれています。
主要ナッツ類の栄養成分と比較して見てみましょう。
栄養成分(100gあたり) | ピスタチオ | アーモンド | くるみ | カシューナッツ |
---|---|---|---|---|
エネルギー | 617kcal | 608kcal | 674kcal | 576kcal |
たんぱく質 | 17.4g | 20.3g | 14.6g | 19.8g |
食物繊維 | 9.2g | 11.0g | 7.5g | 6.7g |
カリウム | 970mg | 760mg | 540mg | 590mg |
鉄 | 3.0mg | 3.6mg | 2.6mg | 4.8mg |
この比較からもわかるように、ピスタチオはカリウム含有量がナッツ類のなかでもトップクラスであることが特徴です。
また、比較的低カロリーでありながら、バランスよく栄養素を含んでいる点も注目すべきポイントです。
ピスタチオに含まれる栄養素とその特徴

ピスタチオは、豊富な栄養素をバランスよく含むことから、日々の食生活に取り入れやすいナッツの一つとして注目されています。
たんぱく質や食物繊維をはじめ、ビタミン・ミネラル・抗酸化成分など、私たちの健康維持や美容意識に寄り添う成分が多く含まれている点も魅力です。
ここでは、ピスタチオに含まれる主な栄養素とそれぞれの特徴について、わかりやすくご紹介します。
ルテイン・ゼアキサンチン・β-カロテンの美容サポート
ピスタチオには、ルテインやゼアキサンチン・β-カロテンなどの抗酸化成分が含まれています。これらは、体内で増えすぎた活性酸素による細胞やDNAへのダメージを抑える働きがあり、健康維持に役立つ栄養素として知られています。
活性酸素とは、呼吸で取り込んだ酸素の一部が変化してできる物質で、免疫や代謝を助ける働きもある一方、過剰になると体に悪影響を及ぼすこともあります。
特に、ルテインとゼアキサンチンは紫外線やブルーライトによるダメージを軽減し、肌の透明感を保つのに役立ちます。β-カロテンは体内でビタミンAに変換され、ターンオーバーを整えて美しく健康的な肌づくりをサポートします。
ビタミンB2・B6による脂質・たんぱく質の代謝アップ
ピスタチオに含まれるビタミンB2とB6は、脂質やたんぱく質の代謝を助ける重要な栄養素です。ビタミンB2は脂質のエネルギー変換をサポートし、体内の脂肪を効率よく燃焼させる働きがあります。一方、ビタミンB6はアミノ酸の代謝に関与し、筋肉や肌・ホルモンなどの合成を促進します。
この2つのビタミンがしっかり働くことで、体内の代謝がスムーズになり、エネルギー効率の良い体づくりや疲労回復だけでなく、美肌効果にもつながります。
ミネラルによる健康・美容の維持
健康や美容を維持するうえで、ミネラルは欠かせない栄養素です。なかでもカリウム・鉄・銅は、体の内側から美しさをサポートしてくれます。
カリウム
ナッツ類でトップクラスの含有量を誇るカリウムは、体内の余分なナトリウム(塩分)を排出する働きがあります。
私たちの体は塩分を摂りすぎると、細胞の外に水分がたまりやすくなり、顔や脚がむくみやすくなります。カリウムはこのバランスを整え、余分な水分を尿と一緒に体外へ排出することで、むくみの解消や予防を助けてくれるでしょう。
また、血圧の調整にも関与する栄養素でもあります。
鉄・銅
鉄や銅は、赤血球の材料となるヘモグロビンの構成成分で、全身に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。これらを積極的に摂取することで、貧血予防につながります。
さらに銅は、活性酸素を分解できる抗酸化酵素の働きをサポートする栄養素としても知られています。コラーゲンの生成にも関与しており、透明感・ハリのある肌づくりに役立ちます。
一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸による心血管系のサポート
ピスタチオは心血管系の健康を意識する方の食生活において、他のナッツ類と比べても特に注目されています。
この注目度は、数多くの科学的研究によって確認されています。
ピスタチオに含まれる脂質の約90%は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸という体に良い脂質です。
これらの良質な脂質について、LDL(悪玉)コレステロール値に関する研究報告があります。健常成人18名を対象とした研究では、ピスタチオを1日あたり42gまたは84g摂取したところ、LDLコレステロール値が低下したという研究結果が報告されています。
また、2015年に行われた大規模な研究分析では、1958年から2013年までの21件の研究結果を検証した結果、ピスタチオが血圧に関する研究で最も多く取り上げられたナッツであることが報告されました。
さらに、ピスタチオに含まれるL-アルギニンというアミノ酸は、血管の健康維持に関わる成分として研究されています。
食物繊維による腸内環境への影響
ピスタチオは食物繊維が豊富で、腸内環境を意識する方に注目されています。
ピスタチオには100gあたり9.2gの食物繊維が含まれており、これは成人女性の1日推奨摂取量(18g)の約半分に相当します。
この食物繊維は、プレバイオティクスとしても機能し、腸内の善玉菌の栄養源になるとされています。
また、不飽和脂肪酸には蠕動運動(ぜんどううんどう)をサポートする働きがあるといわれており、バランスの取れた食事の一環として腸内環境の維持に寄与する可能性があります。
研究によると、ピスタチオを継続的に摂取することで、腸内フローラに良い影響を与えるという報告が行われています。
特に、ビフィズス菌の増加率が他のナッツ類よりも高いことが報告されています。
たんぱく質による満腹感で過食防止
ピスタチオに含まれるたんぱく質は消化に時間がかかる成分です。そのため腹持ちが良く、間食として適量摂取することで、空腹感の軽減にもつながりやすいといわれています。
これにより、間食や過食を防ぎ、自然な食事管理をサポートしてくれます。
24週間にわたって行われた研究では、1日42gのピスタチオを摂取した過体重の参加者が、摂取しなかった群と比較してBMI・腹囲ともに減少が見られたという結果が報告されています。
ピスタチオの1日の摂取量目安と食べ方

ピスタチオの優れた栄養価を安全に得るためには、適切な摂取量と方法を守ることが重要です。
ここでは、ピスタチオの1日の摂取量の目安と食べ方の工夫について解説いたします。
ピスタチオの1日の摂取量目安とは
一般的に、ナッツ類の適量は1日25g程度とされており、これは厚生労働省が推奨する間食の目安200kcalの範囲内に収まります。
ピスタチオの場合、25gで約150kcalとなるため、この量に収まるピスタチオであれば適度な間食として取り入れることが可能です。
食べるタイミングとダイエット中の食べ方とは
ピスタチオは、午後の間食(14〜16時頃)に摂ることで、夕食への影響を抑えつつ、満足感を得られやすいとされています。
この時間帯をおすすめする理由は、以下の通りです。
・血糖値が下がりやすい
・夕食への影響が少ない
・代謝が活発である
・午後の集中力アップをサポート
ダイエット中の間食としてピスタチオを取り入れたい方におすすめなのが、殻付きピスタチオです。
殻をむく行為により食べるペースが自然とゆっくりになるため、満腹中枢が刺激されやすくなります。
また、殻が目の前に残ることで、どのくらい食べたかを視覚的に確認できるため、食べ過ぎを防ぎやすくなるという側面もあります。
さらに、ピスタチオには、水分と一緒に摂ることで食物繊維の働きをサポートするというメリットもあります。
ピスタチオの食べすぎで起こる影響とアレルギーに関する注意点

ピスタチオは高カロリーな食品であるため、摂りすぎには注意が必要です。
大量に摂取すると、エネルギー過多や消化器への負担につながる可能性があります。
カロリー過多による体重増加
ピスタチオは100gで617kcalと、比較的高カロリーな食品です。
「体に良さそうだから」といって大量に摂取すると、逆に体重増加の原因となってしまうため、継続的に適量をとることが重要です。
消化器系への影響
ピスタチオを食べすぎると、食物繊維や脂質の過剰摂取により、胃腸に負担がかかり、消化不良・腹痛・下痢を引き起こす可能性があります。
ナッツアレルギーがある場合は注意が必要
ピスタチオは、ナッツアレルギーの原因食品の一つです。
口の中やのどのかゆみ・腫れ・皮膚の発疹・呼吸困難などの症状が見られた場合には、摂取を控えて医師に相談しましょう。
ピスタチオの商品選ぶ際のポイント

市販のピスタチオは種類が豊富ですが、より安心して取り入れるためには、以下のようなピスタチオ製品を選ぶと良いでしょう。
・素焼き・無塩タイプ
・添加物の少ないシンプルな原材料
・鮮度が保たれた密閉パッケージ
・変色や油のにじみがないもの
初めての方は、少量から取り入れ、体調の変化に注意してみてください。
ピスタチオを生活に取り入れて健康美人を目指そう

ピスタチオとは、その豊かな風味に加え、たんぱく質や食物繊維・ビタミン類・ミネラル・抗酸化成分など、さまざまな栄養素をバランスよく含んだナッツです。
適量を守って取り入れることで、美容や健康・体調管理を意識したライフスタイルに寄り添う食材として役立てられます。
また低GIで腹持ちがよく、間食や料理のトッピングにも活用しやすいのが特徴です。
殻付きタイプを選ぶことで食べ過ぎを防ぎ、より満足感を得やすくなる工夫もできるのでダイエット中にもおすすめだと言えます。
健康的な体づくりは、急激な変化よりもコツコツと積み重ねることが大切です。
ピスタチオを暮らしのなかに自然な形で取り入れながら、自分のペースで楽しみつつ、健やかな毎日を目指してみてはいかがでしょうか。
参照元
・日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
・National Library of Medicine:The effect of tree nut, peanut, and soy nut consumption on blood pressure: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled clinical trials
・National Library of Medicine:The effect of tree nut, peanut, and soy nut consumption on blood pressure: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled clinical trials
・National Library of Medicine:Effects of Pistachio Consumption in a Behavioral Weight Loss Intervention on Weight Change, Cardiometabolic Factors, and Dietary Intake
・農林水産省「食事バランスガイド」