ラクトアイスは本当に体に悪い？アイスクリームとの違いや健康的な楽しみ方を管理栄養士が解説

「ラクトアイスの成分に関する様々な意見がある」という話を聞いたことはありませんか？

夏の暑い日やちょっとしたご褒美に、コンビニやスーパーで気軽に手に取れるラクトアイス。
アイスクリームと比べて価格も手頃で、さっぱりとした味わいが人気の理由です。
しかし、インターネット上で「植物油脂が多い」「添加物が使われている」といった指摘があることから、食品選びを慎重に行う方の間で関心の声も見られます。

本当にラクトアイスはそのような特徴を持つ食品なのでしょうか？
そのように言われる背景には何があるのか、具体的にどんな成分が問題視されているのか気になりますよね。

この記事では、含まれている成分の特徴や背景を整理したうえで、ラクトアイスをより良く楽しむための工夫についても解説します。
ラクトアイスをよく食べるという方は、ぜひ参考にしてみてください。

ラクトアイスとは

ラクトアイスの特徴を正しく理解するためには、まずラクトアイスがどのような食品なのかを知ることが大切です。
ここでは、アイスクリーム類の分類やラクトアイスの特徴について紹介します。

ラクトアイスはアイスクリーム類の分類の一つである

日本のアイスクリーム類は「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」の3つに分類され、それぞれに含まれる乳成分の量が定められています。
この分類は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令」によって、下記のように基準が定められており、商品の表示にも必ず記載されています。

スクロールできます

種類別名称	乳固形分	乳脂肪分	特徴
アイスクリーム	15.0%以上	8.0%以上	濃厚でリッチな味わい
アイスミルク	10.0%以上	3.0%以上	クリーミーでまろやか
ラクトアイス	3.0%以上	規定なし	さっぱりとした軽い味

アイスクリーム

アイスクリームは、3つの中で最も乳成分が多く含まれているのが特徴です。
濃厚でコクのある味わいから、高級感のあるデザートとして支持されています。

アイスミルク

アイスミルクはアイスクリームに比べてやや軽めの口当たりで、ミルクの風味は残しつつも、さっぱりとした味わいに仕上げられています。
製品によっては、乳脂肪の一部を植物性脂肪で代替している場合もあります。

ラクトアイス

ラクトアイスは乳成分が最も少ないアイスクリーム類で、乳脂肪分に関する規定がないのが大きな特徴です。
乳脂肪分に関する規定がないため、植物油脂を主原料として使用し、乳脂肪分を抑えた製品が一般的です。
さっぱりとした味わいで、アイスクリームやアイスミルクに比べ、安価で売られている場合が多いです。

ラクトアイスについて注目されている3つのポイント

なぜ、ラクトアイスについて様々な意見があるのでしょうか？
その背景には、含まれる成分や製造方法に関する誤った認識や実際の課題などが隠れています。
ここでは、ラクトアイスが注目される主な理由についてわかりやすく解説します。

植物油脂に含まれるトランス脂肪酸が懸念されている

ラクトアイスは他のアイスクリーム類と比べて乳脂肪分が少ないため、なめらかな食感とコクを出すために植物油脂が使用されている場合が多いです。

この植物油脂には、製造方法によってトランス脂肪酸が含まれる場合があります。
WHO（世界保健機関）の報告では、トランス脂肪酸について情報提供がなされています。

そのため「ラクトアイス＝トランス脂肪酸が多い＝体に良くない」という認識が広まったのです。

添加物が使用されている

ラクトアイスには、おいしさや食感を保つためにいくつかの添加物が使われています。
「添加物が多いと体に悪そう」という認識から、ラクトアイスについて様々な意見があるというイメージが広がったとされています。

カロリーや脂質が高い

ラクトアイスについて注目される3つ目の理由として、カロリーや脂質が高いことが挙げられます。

ラクトアイスのカロリーは、100gあたり約217kcalほどで、ご飯1杯分（234kcal）とほぼ同等です。
また、先述したように植物油脂も使用しているため、脂質量も比較的高い傾向にあります。

このようにカロリーや脂質が比較的高いことから、食べすぎには注意が必要とされており、食生活全体での調整が求められているのです。

ラクトアイスの実際の特徴について

ラクトアイスは、前述した理由から様々な意見を持たれることも多いですが、それは実際には正しいのでしょうか。
ここでは、ラクトアイスの特徴について、客観的に確認していきます。

トランス脂肪酸の実際の含有量データ

最も注目すべきは、農林水産省が実施した平成26・27年度の調査結果です。

この調査では、市販されているラクトアイス5点を対象にトランス脂肪酸含有量を測定しました。
その結果、ラクトアイスに含まれるトランス脂肪酸含有量の中央値は0.00g/100gというデータが得られています。

もちろんすべての製品が同じ数値とは限りませんが、国内では製造技術の向上により、トランス脂肪酸について技術的改良が進んでいる商品も増加していると言われています。

日本人の平均摂取量と国際基準との比較

WHOでは、成人のトランス脂肪の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えることを推奨しています。
日本人の平均摂取量は0.7~1.1g/日（総エネルギーの約0.3〜0.5%）となっており、通常通りの生活をしている際はこの基準を下回っています。

そのため、仮にラクトアイスを週に2～3回食べたとしても、全体への寄与は軽微と考えられます。

添加物の安全性について

日本で使用が認可されている食品添加物は、いずれも厚生労働省による厳格な審査と科学的な安全性評価を経て許可されたものです。
また使用にあたっては、一日あたりの許容摂取量（ADI）に基づいた使用基準が定められており、日常的な摂取において一般的な摂取量では大きな懸念は示されていません。

ラクトアイスは食べ過ぎに注意する必要がある

ラクトアイスは、適量であれば特に問題ありませんが、食べ過ぎには注意が必要です。
ここでは、ラクトアイスを食べ過ぎた場合の状況について紹介します。

生活習慣病のリスク要因となる可能性がある

ラクトアイスには、糖分や脂質が多く含まれています。
そのため、習慣的に食べていると体重管理や食生活バランスに影響を与える可能性があります。
特に運動量が少ない人はカロリーがオーバーしがちなため、注意が必要です。

虫歯のリスクが指摘されている

ラクトアイスを食べた後に歯磨きをしないと、口の中に糖分が残るため、虫歯のリスクが指摘されています。
とくに就寝前に食べると、唾液の分泌量が減って口腔内が乾きやすくなり、虫歯のリスクがさらに高まるとされています。
ラクトアイスを楽しんだあとは、しっかりと歯磨きを行いましょう。

体の冷えが気になる場合がある

冷たいラクトアイスを頻繁に食べると、体の内側から冷えてしまうことがあります。
体が冷えると体温調節に影響を与える場合があるため、食べるタイミングや量には注意しましょう。

ラクトアイスを上手に楽しむために

ラクトアイスはおいしい反面、カロリーや脂質が高いため、食べ過ぎると体重管理や食生活バランスに影響する可能性もあります。
しかし、1回の摂取カロリーやタイミング・選び方などを気をつければ、気になる点を考慮した楽しみ方が可能です。
ここでは、ラクトアイスをより良く楽しむための工夫について紹介します。

1回の摂取カロリーを意識する

ラクトアイスをより良く楽しむためには、1回の摂取カロリーを意識することが大切です。
厚生労働省と農林水産省が提唱している「食事バランスガイド」によると、間食の参考量として1日あたり200kcal程度が示されています。
そのため、間食として食べる場合は、1日あたり200kcal以内に抑えるのが理想です。

食べるタイミングに注意する

ラクトアイスを食べる時間帯に気をつけることは、食事バランスに関わります。
午前〜夕方にかけては、食事のタイミングとして適しているため、ラクトアイスを食べる予定がある場合など食事バランスを意識する際は、この時間帯に食べると良いでしょう。

食事バランスに配慮したラクトアイスの選び方とは

ラクトアイスを購入する際には、パッケージを確認することが重要です。
パッケージに記載されている原材料や栄養成分を確認することで、脂質や糖質の摂取量を把握することができます。

原材料表示

ラクトアイスを購入する前には、パッケージの「原材料表示」をよく確認しましょう。
「原材料表示」は記載順に含有量が多いため、最初に植物油脂や甘味料が並んでいるものに注意が必要です。
できるだけ牛乳・生クリーム・砂糖・卵など、シンプルな素材が上位にあるものを選ぶと安心です。

栄養成分表示

栄養成分表示では、1個（または100g）あたりのカロリー・脂質・糖質に注目しましょう。
一般的な間食の目安である200kcalを大きく上回る場合は、食べる頻度を減らすといった工夫が必要です。
また脂質や糖質の含有量を確認することで、食事バランスを意識する方の参考になります。

ラクトアイスの食べ過ぎを防ぐための工夫

ここからは、美味しさのあまりついついたくさん食べてしまうラクトアイスの食べ過ぎを防ぐためのアイデアをご紹介します。

頻度と量をあらかじめ決めておく

ラクトアイスをバランス良く楽しむには、自分なりの「ルール」を決めることが大切です。
例えば「週に2回まで」「1回につき1個」など、具体的な基準を設けておくことで、食べ過ぎを防ぎやすくなります。
手帳やスマートフォンのアプリを活用し、食べる頻度や量を可視化することで、自分がどれくらい食べているのか把握しやすくなります。