シナモンは、温かみのある香りが特徴的な、世界中の料理やデザートに使われ愛されているスパイスです。
でも実は、その魅力は香りだけではないことをご存じでしょうか。
シナモンは古くから漢方薬としても使われ、現代でもさまざまな特徴が注目されているのです。
今回は、そんなシナモンの基本的なお話から、健康面での嬉しい特徴、そして日常生活に取り入れるときの使い方まで、そのすごい魅力についてたっぷりと紹介します。
シナモンとはどんな香辛料なのか

シナモンは、クスノキ科ニッケイ属の常緑樹の樹皮から採取される香辛料で、世界最古の香辛料のひとつとしても知られています。
聖書にも記述があるほど古い歴史を持ち、古代エジプトではミイラの防腐剤として、またインドやスリランカを発祥とする伝統医療「アーユルヴェーダ」においても、重要な薬草として活用されてきました。
シナモンにはどんな種類がある?
現在、市場に流通しているシナモンは、主に以下の2種類に分類されます。
種類 | 学名 | 原産地 | 香りの特徴 | 外観特徴 | クマリン 含有量 |
---|---|---|---|---|---|
セイロン シナモン | Cinnamomum verum | スリランカ | 上品で繊細な甘い香り | 薄い樹皮を筒状に巻いた | 極めて少ない |
カシア シナモン | Cinnamomum aromaticum | 中国 | 濃厚で強いスパイシーな香り | 厚い樹皮で肉厚な外観 | 比較的多い |
日本では8世紀頃に中国から「桂皮(けいひ)」という生薬として伝来し、現在でも漢方薬の重要な構成成分として使用されています。
漢方薬においては、カシアシナモンが胃腸の調子を整える・体を温めるなどの目的で、長い間愛用されています。
また形状は樹皮をそのまま丸めたスティック状のものと、細かく粉砕したパウダー状のものとがあり、用途によって使い分けられます。
シナモンを摂ることで期待できる効果とは

シナモンは古くから香辛料や漢方として利用され、健康や美容へのさまざまな働きが注目されています。
では、具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。
ダイエットサポート効果
シナモンにはダイエットをサポートする効果があります。
シナモン特有の香りには食欲を抑える働きがあるとされ、つい間食をしてしまいそうな場合でも、シナモンの香りを嗅ぐことで間食を抑える効果が期待できます。
海外ではシナモンを使ったサプリメントの臨床試験データにおいて、体重やBMI値・体脂肪率に有意な減少があったことが報告されています。
血流の改善
シナモンを取り入れることで期待される効果のひとつが、血流の改善です。
シナモンに含まれる主要成分「シンナムアルデヒド」は、多くの研究から血管の状態をサポートする成分として注目されています。
毛細血管は血管のうち99%を占めており、体内への酸素や栄養の供給、老廃物の回収など重要な役割を果たす部分でもあります。
さまざまな原因で毛細血管は劣化してしまいますが、シナモンの摂取により以下の効果が期待できます。
・冷え性の改善:末端血管への血流が改善され、手足の冷え軽減が期待できる
・肩こり・腰痛の緩和:筋肉への血流増加により、こりや痛みが軽減
・疲労回復の促進:体内への酸素供給が改善されることで、疲労物質の除去促進が期待できる
・美肌効果:皮膚細胞への栄養供給が改善され、肌の新陳代謝をサポート
特に東洋医学では、シナモンは「温性」の食材として分類され、体を内側から温める効果が古くから認められています。
現代の研究でも、シナモンの摂取により体温上昇や血流の向上が確認されており、科学的根拠に基づいた効果であることが証明されています。
毛細血管の修復をサポートする
シナモンに含まれる成分「シンナムアルデヒド」には、毛細血管を修復する働きが期待されています。
毛細血管は、内皮細胞とその外側を支える壁細胞の2層構造でできていますが、加齢などで壁細胞が減ると細胞同士がはがれ、隙間から血液や栄養が漏れやすくなります。
これが続くと炎症や動脈硬化を招き、生活習慣病のリスクを高めてしまいます。
そこで注目されているのが、シンナムアルデヒドの「Tie2(タイツー)」という受容体を活性化する作用です。
Tie2が活性化すると、はがれた細胞同士が再び密着し、毛細血管の細かな傷が修復されます。
その結果、栄養や酸素の漏れを防ぎ、炎症を抑えることで、動脈硬化や糖尿病合併症といった生活習慣病の進行を遅らせる可能性があるのです。
抗酸化作用
シナモンには抗酸化作用を持つとされる物質が豊富に含まれていることから、酸化によるダメージから体を守る効果も期待できます。
シナモンに含まれるプロアントシアニジンは、ポリフェノールの中でも強い抗酸化作用を持つとされています。
具体的には、以下のような健康効果をもたらしてくれるでしょう。
・エイジングケア効果:酸化による体へのストレスを軽減し、いきいきとした生活をサポート
・美白効果:メラニンの生成を抑制し、シミやそばかすの予防をサポート
・心血管疾患の予防:血管の酸化ダメージを防ぎ、必要な機能を維持
またシナモンには複数のフラボノイドが含まれており、これらが相乗的に作用することで、単一成分では得られない効果を発揮することも期待できます。
26種類のスパイスを対象とした研究では、シナモンが最も高い抗酸化活性を示したという報告もあります。
胃腸の働きをサポート
シナモンは、胃腸をはじめとした消化器系の健康維持においても優れたサポート効果を発揮します。
その作用について、以下のような効果が期待できます。
消化促進作用
シナモンの香り成分である桂皮アルデヒド(シンナムアルデヒド)は、嗅覚を刺激して胃液の分泌を促進します。
これにより、以下のような効果が期待できます。
・食物の消化が促進され、胃もたれや消化不良が改善
・食欲増進効果による体力回復や栄養吸収の向上
・胃酸過多の調節による胃粘膜の保護
整腸作用
シナモンには腸の動きを助ける作用も含まれており、以下のような効果をもたらしてくれます。
・便秘の改善:腸に働きかけ、便通促進をサポート
・下痢の緩和:腸の過剰な動きを抑制し、便の状態を正常化
・腸内環境の改善:善玉菌の増殖をサポートし、腸内環境のバランス調整
抗菌・抗炎症作用
シナモンには古くから保存や料理に利用されてきた背景があり、その理由の一つとして、清潔さを保つのに役立つ特性が知られています。
シナモンに含まれる香り成分は、食材の風味を引き立てながら、雑菌の繁殖を抑えるためにも利用されてきました。
ただし、医薬品のように治療効果を示すものではないため、あくまで食生活におけるサポートとして楽しむのが安心です。
シナモンの効果的な摂り方とは

体に嬉しい効果を期待できることから、普段の生活に取り入れたいという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、シナモンのさまざまな使い方について紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ホットドリンクへ入れて手軽に摂取する
シナモンを手軽に摂る方法として、ホットドリンクへ入れるのがおすすめです。
温かい飲み物と組み合わせることで、より香りを楽しめますよ。
シナモンコーヒー
コーヒーとシナモンの組み合わせは、それぞれの健康効果が相乗的に作用します。
・作り方:淹れたてのコーヒーにシナモンパウダーを小さじ1/4程度振り入れる
・期待できる効果:カフェインとシンナムアルデヒドの血流改善効果による、集中力向上や冷えの改善など
・アレンジ:シナモンスティックを添えることで、より上品な香りを楽しめる
シナモンチャイ
インドの伝統的なスパイスティーであるチャイは、シナモンの効果を最大限に活用した飲み物として愛されています。
・材料:紅茶・牛乳・シナモンスティック・カルダモン・クローブ・生姜など
・作り方:スパイスを煮出してから紅茶葉を加え、最後に牛乳を注いでこす
・期待できる効果:消化促進や体を温める効果、また香りによるリラックス効果など
ゴールデンミルク
ゴールデンミルクは「ターメリックラテ」とも呼ばれ、ターメリックとシナモンを組み合わせた、色鮮やかなホットドリンクです。
・材料:温かい牛乳(または植物性ミルク)・ターメリック・シナモン・蜂蜜
・期待できる効果:ターメリックに含まれるクルクミンによる抗炎症作用や、香りによるリラックス・安眠効果など
サラダや肉の隠し味や下味として使う
シナモンは甘いデザートだけでなく、料理の隠し味としてもおすすめです。
特に肉料理の下味として使用することで、味の深みを演出できます。
ポテトサラダへの活用
・使用量:4人分のポテトサラダに対してシナモンパウダー小さじ1/4
・期待できる効果:ジャガイモの糖質とシナモンの組み合わせにより、血糖値の急激な上昇を抑制
・風味:シナモンの甘い香りが、マヨネーズの油っぽさを和らげてくれる
・コツ:ジャガイモが温かいうちにシナモンを混ぜることで、香りが全体になじみやすくなります
肉料理の下味
シナモンは中東やインド料理において、肉料理に多く使用される重要なスパイスです。
独特の甘い香りが加わることで、いつものメニューがワンランクアップされた風味になるでしょう。
豚の角煮:豚肉のくさみを消し、風味アップ
・作り方:醤油・酒・砂糖にシナモンスティックを加えてゆっくりと煮込む
・期待できる効果:シナモンの消化促進作用により、脂肪の多い豚肉の消化をサポート
・風味:豚肉特有のくさみを消し、上品な甘い香りをプラス
鶏肉のスパイス焼き:淡白な鶏肉にパンチのある香りで食欲増進
・作り方:塩・胡椒・シナモンパウダー・パプリカを鶏肉によくまぶして焼く
・期待できる効果:シナモンの抗菌作用により保存性が向上し、香りで食欲増進
・風味:エキゾチックで深みのある味わい
牛肉のスパイシー煮込み:牛肉をより深い味わいに
・作り方:牛肉をシナモンスティック・ローリエ・トマトと一緒に煮込む
・期待できる効果:肉のくさみを和らげ、深い香りで満足感が高まり減塩も
・風味:甘い香りが加わることでより本格的な味わいに
お菓子やおやつにプラスして風味づけする
シナモンをお菓子に使用することで、甘く華やかな香りをより楽しめます。
またいつものおやつや軽食に加えれば、手軽にシナモンの持つ効果を得られるでしょう。
シナモンロール
シナモンといえば、シナモンロールを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
独特の香りを楽しめるスイーツの代表格とも言える存在です。
・生地:強力粉・イースト・卵・牛乳・バター
・フィリング:バター・砂糖・シナモンパウダー(大さじ1程度)
・コツ:フィリングにはシナモンパウダーをたっぷり使用し、生地全体に行き渡らせる
アップルシナモンケーキ
りんごの甘酸っぱさとシナモンの香りは、まさしく黄金コンビとも言えます。
「アップルパイは手間がかかるから」と敬遠している方でも、混ぜるだけのパウンドケーキは手軽なおやつとしてもピッタリです。
・材料:薄力粉・りんご・卵・砂糖・シナモンパウダー
・アレンジ:レーズンを加えることで、食感や風味・栄養素をさらにプラスできます
シナモントースト
手軽に作れるため、朝食やおやつとしても最適です。
食パンをスティック状にカットすれば、小さなお子様でも食べやすくなります。
・作り方:バターを塗ったトーストにシナモンと砂糖をかけて焼く
・アレンジ:メープルシロップとの組み合わせもおすすめ
シナモンを摂る際の注意点は?

体への嬉しい効果が期待できるシナモンですが、摂取には注意が必要となるポイントがあります。
以下のような点に中止ながら、うまく食生活へ取り入れましょう。
一日の適量を超えて摂取しない
シナモンにはさまざまな効果が期待できますが、過剰摂取による副作用のリスクも存在します。
特にカシアシナモンに含まれる「クマリン」という成分は、大量摂取により肝機能障害を引き起こす可能性があります。
安全な摂取量の目安
一般的に、シナモンを摂る際は以下の量を守ることが推奨されます。
区分 | カシアシナモン | セイロンシナモン |
---|---|---|
大人(体重60kg) | 1日2g未満(小さじ1弱) | 通常の調理使用量であれば 制限なし |
子ども(体重15kg) | 1日0.5g未満 | 大人の1/4程度 |
大人と子供、またカシアシナモンかセイロンシナモンかによって摂取量が異なる点に注意が必要です。
購入時はどちらのシナモンなのか、また自宅で詰め替えて使用する際は注意書きをしておくことで、より安全に使用できるでしょう。
シナモンごとのクマリン含有量の違い
種類 | クマリン含有量(1gあたり) | 特徴 |
---|---|---|
カシアシナモン | 1〜12.1mg | 含有量が多く、 摂取量に注意が必要 |
セイロンシナモン | 0.004〜0.022mg | カシアの約1/200と少ない |
このように、シナモンの種類によってクマリンの含有量が大きく異なることがわかります。
安全かつおいしく摂るためには、どの種類を使用すべきかを把握しておくようにしましょう。
妊娠・授乳中は医師に相談する
妊娠中および授乳中のシナモン摂取については、特別な注意が必要です。
シナモンによる作用で、妊娠経過に影響を与える可能性があるためです。
お菓子や料理に使用する程度であれば問題ありませんが、妊娠経過に不安がある場合はまずかかりつけの医師に相談しましょう。
服用中の薬がある場合は医師・薬剤師に相談する
シナモンはさまざまな成分を含むため、処方薬との相互作用が発生するリスクが存在します。
特に血圧降下薬・抗凝固薬などの薬剤を服用している場合は、医師や薬剤師への相談が必要です。
ただしいずれの場合も、お菓子や飲み物に入れて楽しむ程度であれば問題ない場合がほとんどです。
まとめ
シナモンは、その甘く魅惑的な香りに加えて、現代科学によって証明された多岐にわたる健康効果を持つ、まさに「効果がすごい」と言えるスパイスです。
現代におけるさまざまな悩みや健康へのサポートは、日常生活の質の向上に大きく貢献します。
ただし、どんなに優れた食品でも適量を守ることが重要です。
特にカシアシナモンに含まれるクマリンの過剰摂取にはさまざまなリスクがあるため、一日の目安を守り、セイロンシナモンを選択するなどの対策をおすすめします。
また妊娠中や授乳中の方、処方薬を服用中の方は、医師や薬剤師との相談を通じて安全な摂取方法を確認することが大切です。
シナモンを上手に活用することで、毎日の食生活がより豊かになり、健康維持にも大きく貢献してくれます。
古くから愛され続けてきたこの素晴らしいスパイスの力を、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。